2015年2月14日土曜日

アル・ジョルスン大好き!

 1927年の『ジャズ・シンガー』公開は、映画史の中の大事件だった。この映画が大ヒットしたことで、19世紀末以来、およそ30年続いたサイレント映画の歴史に終止符が打たれたからだ。

 この映画に主演して世界初の「歌う映画スター」になったのが、ブロードウェイの人気歌手アル・ジョルスン(Al Jolson / 1886〜1950)だった。彼はこの後もワーナー製作のミュージカル映画に次々主演して一時代を築く。

 Al Jolsonは「ジョルソン」と表記する方が自然な気もするが(Wikipediaの見出しは「ジョルソン」になっている)、これを「ジョルスン」と書くのもまた映画史的な必然によるものだ。1946年に製作された彼の伝記映画『The Jolson Story』の邦題が『ジョルスン物語』で、3年後に製作された続編『Jolson Sings Again』の邦題が『ジョルスン再び歌う』なのだ。だからWikipediaがどうであろうと、映画ファンは彼をアル・ジョルスンと呼ぶのである。

 ジョルスンは本名エイサ・ヨエルソンというロシア系ユダヤ人なのだが、舞台では顔を黒塗りにして黒人に扮し、「マミー」や「スワニー」といった南部黒人風の曲を朗々とした声で歌いあげた。黒人であることもフェイクなら、彼が歌う南部風の楽曲もフェイクだ。今なら「差別的だ」と批判されそうだが、ジョルスンが舞台に立っていた20世紀初頭にはこうした芸がウケていたのだ。


 白人が顔を黒く塗って黒人に扮し、歌や踊りを披露するエンタテインメントを「ミンストレル・ショー」と呼ぶ。もともとは南北戦争後に、解放された黒人の一部が各地で芸を見せるようになったのがはじまりだが、これが大ウケだったので、そのうち白人たちも顔を黒塗りにして同じような芸をするようになった。それは本物の黒人芸人を戯画化し、その動作や歌を誇張するものになって行く。

 これが舞台芸として広まっていくと、当初の黒人芸人は排除されて「白人芸人による黒人ショー」として定着する。何しろ当時は黒人がステージに立てない時代なのだ。黒人には馬車の荷台の仮設ステージで歌ったり踊ったりすることは許されても、劇場の檜舞台には立てなかった。今ではすっかり消えてしまった芸だが、その様子は『ジョルスン物語』の中で再現されている。映画は1900年代のステージの様子を映画的にドレスアップしているわけだが、何となく往時の様子を偲ぶことができる。

 しかし20世紀初頭のミンストレル・ショーはもはや「過去の芸」になっていて、アル・ジョルスンはその最後の後継者であったようだ。ジョルスンは舞台の持ち芸であるこの黒塗りの黒人を、映画の中でも繰り返し演じている。

 僕はアル・ジョルスンが大好きなのだが、それは彼の黒塗り黒人スタイルの芸が好きなわけではなく、彼の朗々とした張りのある歌声が好きなのだ。ジョルスンの映画はアメリカだとDVDで発売されているが、僕はそれには目もくれずにもっぱらCDでジョルスンの歌を聴いている。国内盤はほとんどないので、全部輸入版。ベスト盤と称するものが山ほど売られているのだが、何枚か買うと必ず何曲かずつ曲がダブってくるんだよな……。

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